治療法は、おもに点眼薬を使う薬物療法、レーザー治療、手術の3種類で、まずは点眼治療から始める。

 点眼薬は非常に数が多い。大きく分けると8系統あり、それぞれに複数の成分があり、各成分には複数の商品がある。

 8系統のうち、最初の1剤としてよく用いられるのがプロスタグランジン関連薬だ。これだけで眼圧が十分に下がらないときは、β遮断薬か炭酸脱水酵素阻害薬、あるいはその両方を併用する。特徴は次のとおり。

●プロスタグランジン関連薬=眼圧下降効果が最大。1日1回点眼。副作用として目の周囲の黒ずみなど。
●β遮断薬=眼圧下降効果が2番目に高い。1日1、2回点眼。目の副作用は少ないが、心肺機能に悪影響を及ぼすリスクがあるので、心臓や呼吸器に持病がある人には使えない。
●炭酸脱水酵素阻害薬=眼圧下降効果はほどほどだが、副作用が少ない。1日2、3回点眼。

 多くの患者は2~4剤を併用する。次の目薬をさすまで5分以上あける必要があり、負担が大きいので指示どおりにささない人もいる。それに、緑内障患者は正面がよく見えないので、うまくさせないことも多い。

「それで、思ったほど眼圧が下がらないことがよくありました。期待どおりの効果をあげるには、点眼回数を減らすことがポイントなのです」(同)

 そこで登場したのが、2種類の薬を一つにした配合剤だ。現在、日本で使える配合剤は、1日1回点眼の「プロスタグランジン関連薬+β遮断薬」が4種類、1日2回点眼の「β遮断薬+炭酸脱水酵素阻害薬」が2種類ある。

 岐阜市に住む会社員の吉川孝之さん(仮名・60歳)は、45歳で緑内障と診断され、48歳から山本医師の治療を受けている。当時の眼圧は両眼とも17mmHg(以下、単位略)で、視野は左右とも半分ほど欠けていた。

 この数年は朝点眼のプロスタグランジン関連薬と、朝夜点眼のβ遮断薬を使い、眼圧は13ほどを保っていた。だが、昨秋から夜の点眼がおろそかになり、眼圧が上がり始めた。

 今年1月、山本医師は発売されたばかりの配合剤「カルテオロール・ラタノプロスト」への切り替えを提案した。カルテオロールはβ遮断薬、ラタノプロストはプロスタグランジン関連薬で、朝1回の点眼でよい。これに変えてから吉川さんは点眼忘れがなくなり、眼圧は13で安定している。

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