劇団東京乾電池の座長を務めながら、映画界でも存在感を示し続けてきた柄本明さん。映画賞を総なめにした「カンゾー先生」が公開された1998年以来、作家・林真理子さんとの対面は2度目。役者という仕事について語ってもらいました。
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林:新橋演舞場には、亡くなった中村勘三郎さんに誘われて出るようになったんですか。
柄本:そうですね。新橋演舞場、いわゆる商業演劇の舞台に勘三郎さんから誘われたんです。僕はなんにもできなくて、勘三郎さんと藤山直美さんという2人の天才のあいだで1カ月間、「俺、なんでこんなところでやってるんだろう」と思って悩みましたね。苦しみました。
林:今から20年ぐらい前ですね。それまでお出になっていた舞台と商業演劇って、そんなに違うものですか。
柄本:いや、結局は同じです。ただ、僕らがやっている小さい場所と違って、千何百人も入るじゃないですか。誰に見てもらってもオーケーなわかりやすいホン(脚本)ですけど、ああいった場所での所作が僕にはなかなかわからなくて。勘三郎、直美はすごかったなあ。「浅草慕情~なつかしのパラダイス~」見ました?
林:はい、拝見しました。
柄本:勘三郎さんと直美さんのケンカのシーンがあるでしょう。名場面ですね。その稽古を初めてやった日、2人がほとんど本番と一緒。ほんとに俺、目が飛び出ましたね。
林:ほォー、そうですか。