一方、「ジンゴ」では、スクリーンに映し出された祭礼とおぼしき民族衣装を身にまとい、あるいは普段着のまま踊るアフリカの人々のリズムと見事に一致という場面も。さらに意表を突くエンヤのカバー曲「オリノコ・フロウ」、それに続く「レイン」などでの叙情的な展開も味わい深かった。

 カルロス・サンタナの多彩で柔軟なギターそのまま、バンドのアンサンブルも繊細さとダイナミズムが巧みに同居している。しかもコンガ奏者のパオリ・メヒアスやティンバレス奏者のカール・ペラーソの演奏はシャープで斬新であり、ダイナミックなシンディ・ブラックマンのドラム、デイヴ・マシューズの洗練されたキーボードなどが、新たなサンタナを印象付ける。

 そして「ブラック・マジック・ウーマン」「シーズ・ノット・ゼア」といったおなじみの作品でのカルロス・サンタナのゆとり、落ち着きのある重厚な演奏こそは、その年輪を物語る。新たな息吹を吹き込んだ懐かしいヒット曲、視覚的な要素を含めてエンターテインメント性の豊かな充実したステージ内容に満足感を覚えた。

 さて、73年の初来日時の大阪公演をそのままに再現したアルバム『ロータスの伝説 完全盤―HYBRID 4.0―』。サンタナについては初期作品や、今回の公演でもスクリーンにその模様が映し出された映画『ウッドストック』をきっかけに、その存在が知られたわけだが、73年の初来日時の演奏に接し、彼らについて語られていたラテン・ロック・バンドといった狭義な認識を改めさせられた。

 名盤『キャラバンサライ』を転機として、アフロ・キューバン的なものだけでなく、ジャズ、ブラジリアン・ミュージックなどへの傾倒も深め、ラテン的なリズムの高揚だけでなく壮大で荘厳な演奏、サウンドが展開されていたからだ。それには、カルロス・サンタナが当時シュリ・チンモイに傾倒し、精神性の高い音楽展開を目指していたこともあった。アルバムの幕開け、観客に「瞑想(めいそう)」を呼びかけ、1分間の沈黙が収録されているのも興味深い。

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