一時期、河野グループで麻生氏と親交を深め、現在は細田派の最高顧問を務める衛藤征士郎・元衆院副議長は本誌に対し、「政党力強化のために派閥パワー拡大を図ったことは評価したい」とこう語る。

「麻生さんは首相に対抗して『アソノミクス』をやりたいのでしょう。ずばり、総裁選で岸田文雄外相を担ぐのではなく、麻生さん自ら打って出ると思うよ」

 政治評論家、小林吉弥氏も同様の見方を示す。

「麻生氏は党内の安倍一強への不満が充満している状況を十分わかっており、一強がこの先、続くとは思っていない。本人としては再登板したいはずです。無理ならば、ポスト安倍を睨み、キングメーカーとして君臨すればいい。犬猿の仲とされる古賀誠元幹事長とも手を組んで、岸田派を含む大宏池会を次の総裁選までに実現させたい考えだ」

 政府関係者は解説する。

「麻生さんは首相と一体化している菅義偉官房長官・今井尚哉筆頭首相秘書官ラインに対する反発が強い。経産省主導の官邸に押され続ける財務省の看板を背負い、政策立案にかかわる影響力低下の払しょくを図り、権力構造を変化させたい狙いがある。政治は数が全て。奇麗ごとではない」

 こうした見方に対し、首相の出身派閥・細田派幹部はこう本音を言う。

「安倍、麻生両氏の畏友(いゆう)関係がクローズアップされるが、首相は麻生氏に対して警戒感を持っている。政権を支える菅、党をまとめる二階(俊博)幹事長への信頼感とは決定的に相違がある」

 この言葉どおり、首相は15日、父の故晋太郎元外相をしのぶ会で「(細田派で)四天王を作りたい」と発言。自らに続く後継者育成に意欲を示してみせた。

 これには麻生氏の動きに加え、党の大番頭・二階氏の安倍官邸への不信感も背景にある。

 中国で習近平国家主席と会談し、帰国した二階氏と17日夜、会食した作家、大下英治氏はその胸中をこう慮(おもんばか)る。

「二階派の今村雅弘前復興相を更迭したことについて、親分である二階さんとしては、自分に責任を取らせる形を取ってほしかったと不満のようでした。『せっかく、新しく派閥に入る人の晴れの場(派閥パーティー)なのに、安倍首相のあの発言(今村失言を陳謝)は……』と言っていました」

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