肩こりの根治法として注目されているストレッチとは(※写真はイメージ)
肩こりの根治法として注目されているストレッチとは(※写真はイメージ)

 長時間のパソコン作業や運転などで、カチコチに凝り固まった肩。コリをほぐしてもらおうとマッサージを受けたが、しばらくすると元通り。そんな肩こり体質の原因は、全身の筋肉を包み込んでいる薄い膜「筋膜」にあるかもしれない。肩こりの根治法として筋膜を柔らかくするストレッチに注目が集まっている。

 厚生労働省の調査によると、肩こりがある人は、男性では腰痛に次いで2位、女性では1位だ。スマホなどの普及で、さらに切実な問題になっている。だが、これほど悩む人が多いにもかかわらず、残念ながら決め手の解消法がない。

「それは、肩だけに目を向けているからです。『筋膜』が重要なのです」

 こう話すのは、理学療法士・医学博士の竹井仁さん(首都大学東京大学院教授)。筋膜の概念を日本に持ち込んだ第一人者で、『自分でできる!筋膜リリースパーフェクトガイド』(自由国民社)の著者だ。

 筋膜とは、簡単にいうと、全身の筋肉を包み込んでいる薄い膜のこと。皮下組織にある浅筋膜、筋肉の周囲を覆う深筋膜、筋肉の表面にある筋外膜、筋肉を構成する筋線維の束を包む筋周膜、筋線維を包む筋内膜、の5種類ある。コラーゲンとエラスチンという2種類の線維組織から成り、伸縮が自在。姿勢を保ったり、体を正常に動かしたりするなどの役目を果たし、第2の骨格とも言われている。

「30年ほど前から一部の専門家の間で重要性が指摘されてきた筋膜ですが、ここ数年で飛躍的に研究が進みました。実は、この筋膜こそ、肩こりを解消できる〝根治法〟として、注目されているのです」(竹井さん)

 例えば、肩こりの原因となる長時間のデスクワーク。同じ姿勢で筋肉に長時間力が入ったままだと、血管が圧迫されて血流が届かなくなるため筋膜は硬くなる。その結果、動きに制限が出てきたり、コリ症状を引き起こしたりする。そのため肩をほぐすことで解消するというのが、今までの考え方。だが、筋膜で着目されるのは全身だ。

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