作家の百田尚樹氏のツイッターでの発言がSNS上で物議を醸している(※写真はイメージ)
作家の百田尚樹氏のツイッターでの発言がSNS上で物議を醸している(※写真はイメージ)

 北朝鮮情勢をめぐって、作家の百田尚樹氏のツイッターでの発言がSNS上で物議を醸している。

<もし北朝鮮のミサイルで私の家族が死に、私が生き残れば、私はテロ組織を作って、日本国内の敵を潰していく>(4月13日)

 物騒な発言だが、翌14日には朝日新聞を名指しした。

<昔、朝日新聞は、「北朝鮮からミサイルが日本に落ちても、一発だけなら誤射かもしれない」と書いた。信じられないかもしれないが、これは本当だ。今回、もし日本に北朝鮮のミサイルが落ちた時、「誤射かもしれない」と書いたら、社長を半殺しにしてやるつもりだ>

 百田氏が指摘したのは、小泉純一郎内閣で有事法制が審議されていた2002年4月20日付の朝日新聞記事だ。「武力攻撃事態」の判断について、Q&A方式で書かれた一文を抜き出して、ヤリ玉に挙げているのだ。ジャーナリストの青木理氏はこう言う。

「万一、北朝鮮のミサイルが落ちたとき、国内でそんなことをすると言うなら、北朝鮮に潜入して本当の“敵”をやっつけるぐらい威勢のいいことを言えばいい(笑)。ピント外れもいいところです」

 百田氏に発言の真意を問うと、こう答えた。

「冗談半分に決まっているじゃないですか。言葉が過ぎたのは事実なので、その文言は削除しました。ただ、それだけ朝日の記事に腹が立ったということです」

 百田氏の冗談も、いま国会で審議されている「共謀罪」が成立すれば、冗談では済まなくなる。

 共謀罪に詳しい足立昌勝・関東学院大学名誉教授が説明する。

「百田氏のつぶやきが計画の一部と仮定して、誰かが賛意を示せば、2人以上の計画という要件に当たる可能性がある。政府は、対象を『組織的犯罪集団』に限定するから一般人は関係ないというが、取り締まりは現場の警察官の判断一つです。警察官が被疑者を組織的犯罪集団の一員と思えばいいわけです。逮捕されれば、身柄は最長23日間拘束される。一般市民がそれをやられたら、会社をクビになるかもしれない。当然、萎縮します。不起訴になっても目的は達成される。そこが共謀罪の恐ろしさです」

 監視社会が蔓延する日が近くまで来ている。(本誌・亀井洋志)

週刊朝日  2017年5月5-12日号