2014年「マンガ肉と僕」で監督デビューし、2作目の「欲動」は、釜山国際映画祭で新人監督賞を受賞した。現在公開中の「雪女」は、小泉八雲の「怪談」の中の一編を独自の解釈で脚色し、映画化したものだ。

「もともと、小泉八雲にはとくに詳しいわけではありませんでした。でも、4年ほど前に人にすすめられて読んでみたら、現代人が忘れかけている何かが詰まっていると思った。そこに私なりの現代に対する思いを取り込んだら、新しい映画ができるんじゃないかと直感して。私は、人間の理屈では説明できない根源的な部分を、映像で描きたい。人とは違う部分、人には言えない部分を持っている人間という存在の在り方を、映画という表現を通して世の中に問いかけていきたいんです」

 脚本を書いているときも、撮影をしているときも、そこに答えを見いだしているわけではない。映画が、自分と観客の想像力をたくましくする手助けになればそれでいい。彼女自身、企画、脚本、監督、出演と、あらゆる役割をこなす中、思い通りにいくことよりも、ままならないことのほうに面白みを感じている。

「肉体で表現しているときが、もどかしさや制限を感じるので、ある意味、一番生きている実感が感じられるというか……(笑)。映画製作でいろんな役割がある中、一番面白いのは俳優かもしれない。文章を書いているときとお金集めは、ただひたすら苦しいです(苦笑)」

週刊朝日 2017年3月24日号