実際、福岡市の昨年12月の有効求人倍率は1.64倍で、全国平均の1.43倍を上回っている。

「福岡は若い女性も増え、元気な街のイメージが高まっている。新たな企業の進出や中心部の再開発も計画され、しばらくは勢いが続きそうだ」(不動産会社幹部)

 市町村ごとの人口増減率をみると、各地域の特色が表れている。1位の福岡県新宮町は福岡市の北にあり、10年にJR新宮中央駅ができたあたりから街が活気づいてきた。博多駅まで電車で約20分の立地で、高層マンションや戸建て住宅が立ち並ぶ。福岡市中心部に比べて価格が割安だったこともあり、若い世代が購入した。12年には大型家具量販店のイケアが九州で初めて進出し、街のイメージも上がったという。

 このほか福岡市の周辺では福岡県粕屋町が18位に入る。福岡市の「ベッドタウン」として、やはり若い世代が目立つ。

 人口増加率の高い市町村をみると、大都市周辺のベッドタウンが多い。宮城県大和町や富谷町(現富谷市)は仙台市に隣接する。埼玉県戸田市や茨城県つくばみらい市は東京都心と鉄道で結ばれていて、マンションや住宅が次々に立ち並ぶ。名古屋市の周辺には愛知県長久手市や阿久比町、三重県朝日町がある。

 地域経済の問題に詳しいみずほ総合研究所の岡田豊主任研究員は、

「郊外の一部の街が、若い世代に選ばれている。いまは庭付きの大きな家が買えるかどうかより、通勤のしやすさを重視する。職場とのアクセスの良さが、人口増加率のランキングにも表れている」

 とみている。

 沖縄県も複数の町や市が20位以内に入る。子供が多く生まれ、人口は全体的に増加傾向だ。

 変わったところでは増加率2位の鹿児島県十島村。村が移住者に手厚い補助金を用意するなどの過疎対策で、漁業に従事する若者らが集まり、もともと人口が少なかったことで数値が跳ね上がったのだ。

 減少率の高い市町村では、東日本大震災の被災地が並ぶ。北海道夕張市や歌志内市のようにかつては炭鉱で栄えたが、代わる産業が見つからないところもある。ユズ加工品による地域活性化で知られている高知県馬路村も、大きく減った。

「特産品で地域振興をしても、若者を呼び寄せられない。過疎地に若者が働ける職場を新たにつくることは非常に難しい。ほとんどの自治体にとって、人口減少に歯止めをかけることは無理ではないか」(岡田氏)

週刊朝日 2017年3月17日号より抜粋