政令指定都市の人口で5位になったことを記念し、「5」が浮かび上がった福岡市役所 (c)朝日新聞社
政令指定都市の人口で5位になったことを記念し、「5」が浮かび上がった福岡市役所 (c)朝日新聞社

 人が減っている日本。将来「消滅」する自治体も出てくるとされる。一方で大都市の中心部には人が集まり、地方でも若い世代を引きつける元気のいい街もある。みんなが住みたがる理由はどこにあるのか。「二極化」が進む日本の街のいまを探る。

 まずは人口の全体的な状況を見てみよう。街が元気だということは、住民が増えるかどうか、と深く関わっているからだ。

 5年に一度の国勢調査の結果がまとまった。全国の人口は1億2709万4745人(2015年10月1日時点)で、前回より96万2607人少なかった。1920年の調査開始以来、初めて減少した。高齢化で亡くなる人が多いのに、生まれる子供が少ないから自然に減っていく。人口は今後も右肩下がりで、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、約35年後には1億人を割り込みそうだ。

 地方を中心に住民は急速に減っている。10年から15年までの5年間でみると、全国に1719ある市町村のうち82.5%で減少。1割以上減ったところは230(13.4%)あった。逆に1割以上増えたところは11(0.6%)しかない。

 住民が少なくなると経済が停滞し、税収も減って、行政サービスは低下する。若者は仕事を求めて都市へと向かい、さらに住民が減る。こうした「悪循環」が、あちらこちらで起きている。

 民間の研究機関「日本創成会議」は、40年までに若い女性(20~39歳)の人口が5割以上減り、存続が危ぶまれる「消滅可能性都市」が、全国の自治体の半数に上ると予測している。

 悲観的な将来だが、自治体は若者らを取り込んで生き残ろうと大わらわだ。

 人が現在も集中する大都市の状況をみると、東京特別区と政令指定都市の人口増減率では、福岡市が15年までの5年間で5.1%増と断トツ。人口でも神戸市を抜いた。ほかでは東京特別区や川崎市、さいたま市なども伸びている。減っているのは製造業の比重が高いところだ。北九州市や静岡市、浜松市などが落ち込んでいる。

 なぜ福岡市が好調なのか。地元の不動産会社の幹部は「大企業の支店があって、サービス業が発達している。IT関連やコールセンターなど職場があり、若者が集まりやすい。九州で一人勝ちの状況」と指摘する。

 福岡市は15~24歳の若者の転入が多いことが人口増につながっているとみている。大学や専門学校を卒業した学生らが就職して、定着が進んでいるとの見方だ。

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