作家の室井佑月氏は、国有地が学校法人森友学園に破格で売却された問題に対して、野党はもっと追及すべきだと訴える。

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 大阪府豊中市の国有地が、近隣国有地と比べ90%オフという破格値で売られた。小学校を建てるという学校法人森友学園に。

 この小学校の名誉校長は安倍首相の奥さん、昭恵さんだ。

 そして2014年ごろ、安倍さんが総理在職時に、「安倍晋三記念小学校」という名で寄付を募った振込用紙が配られていた。

 そうそう、森友学園が運営している幼稚園はすでにある。塚本幼稚園幼児教育学園だ。この幼稚園は園児に軍歌を歌わせたり、教育勅語を暗唱させたり。日刊スポーツの記事によれば、運動会で園児に「日本を悪者にする中国や韓国は心を改めて。安倍首相がんばれ!」、そう選手宣誓させたみたい。んでもって保護者たちにも、「よこしまな考えを持った在日韓国人や支那人」などと書かれた差別文書を配布するなどし、それも問題になっている。

 まあ、森友学園の理事長の籠池泰典さんは「日本会議大阪」の役員だからな。

 そんな幼稚園で昭恵さんは、講演を開き、

「普通の公立小学校の教育を受けると、せっかくここで芯ができたものが、またそこ(公立小学校)に入った途端、揺らいでしまう」

 などと発言している。これって、森友学園の作る小学校への勧誘じゃん。

 なのに、2月17日、このことで国会で質問を受けた安倍さんは、森友学園の教育は素晴らしいと誉めながらも、

「(国有地売却に)私や妻が関係していたということになれば、これはもう、まさに私は総理大臣も国会議員も辞めるということははっきりと申し上げておきたい」

と述べた。

 まさにもへったくれも、ここまで証拠があんだから、じゃあもう辞めなきゃって話だわ。ご本人がせっかく辞める、といってるのだ。野党は責めなきゃ。マスコミだって。

 ちなみに、財務省はつい先日までこの国有地の値段を頑(かたく)なに非公開としていた。豊中市が公園にするため14億2300万円で買った近隣の国有地とほぼ同じ大きさなのに、森友学園には1億3400万円で売られた。

 
 財務省は地下に埋まっていたゴミの撤去費用約8億1900万円を控除した、と説明しているが、苦しい嘘だ。8億円ぶんのゴミが撤去された痕跡がない。それに、森友学園の前にもっと高い値段で買いたいという学校法人があったが、そこには売らなかった。

 国有地は国の財産だ。それを仲間である個人に、安値で簡単に譲るとは、とんだ愛国心だな。

 トランプさんによいしょするため、米国のインフラ事業への投資で約51兆円の市場を創出するみたいだし。安倍さんたら、海外で良い顔したいから、外遊のついでにうちらの血税をバラまいてくるんだよな。金だけならまだしも、自衛隊員の命まで差し出そうとして。

 それにしても、「安倍晋三記念小学校」って、お隣の金家が好みそうなセンスだわい。

週刊朝日 2017年3月10日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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