ただし、ピフィラティスの中には、妊娠末期、人工股関節・膝関節、骨盤臓器脱などの人がやってはいけない動きも含まれている。

「そういう人は、10種の中から自分ができる3~4種をやればいいのです。ピフィラティスだけで十分改善できるという意見もありますが、まだ長期的な成績は出ていません。尿漏れ改善の第一選択は、骨盤底筋を鍛える従来のトレーニングで、それにピフィラティスを加えるというやり方がよいと思います」(同)

 同じ尿漏れでも、切迫性尿失禁の場合は治療法が異なる。

「過活動膀胱には抗コリン薬など、薬物療法が有効でしょう」

 と話すのは、埼玉医科大学病院泌尿器科の朝倉博孝医師だ。抗コリン薬は、膀胱が脳に尿意を伝えるときの神経伝達をブロックして、頻尿や尿漏れを抑える。

 埼玉県在住の村山雅恵さん(仮名・60歳)は、切迫性尿失禁で抗コリン薬を服用していた。薬のおかげで尿漏れはなくなったものの、副作用で便秘がひどくなってしまった。そこでほかにいい治療法はないかと朝倉医師のもとをおとずれた。

「抗コリン薬には便秘や口の渇きといった副作用があり、それがつらくて続けられない人も少なくありません。副作用が少ない『β3アドレナリン受容体刺激薬』という薬もありますが、やや効果が弱い場合があります。そこで村山さんの治療には磁気刺激療法を選択しました」(朝倉医師)

 磁気刺激療法は、骨盤底筋の神経を磁気で刺激するもの。尿失禁治療薬を12週間以上服用しても症状の改善が見られない、あるいは副作用で尿失禁治療薬が使えない場合に、保険で受けられる治療だ。

「磁気刺激療法は、治療器の上に服を着たまま30分間座るだけで、痛みなどはありません。また1回の費用も3割負担の場合で210円と安く、今のところ副作用やトラブルはありません。1週間に2回を限度として、6週間で1クール、年2クールまでが保険で受けられます」(同)

 村山さんは磁気刺激療法を2クール受け、薬をやめても尿漏れしなくなった。現在は経過観察中で、症状が現れたら再度、磁気刺激療法を検討する予定だ。

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