追悼・松方弘樹 忘れえぬ面影「酒とマグロと義理人情」 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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追悼・松方弘樹 忘れえぬ面影「酒とマグロと義理人情」

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週刊朝日#訃報
写真に納まる松方さん(左)と木村社長

写真に納まる松方さん(左)と木村社長

喜代村の倉庫に保管されている魚の輸送用木箱。「この鮪 松方弘樹がつる!!」と松方さんの自筆コメントとサインが書かれている。

喜代村の倉庫に保管されている魚の輸送用木箱。「この鮪 松方弘樹がつる!!」と松方さんの自筆コメントとサインが書かれている。

 俳優の松方弘樹さんが74歳で亡くなった。松方さんは一昨年5月に沖縄県石垣島沖で361キロの巨大マグロを釣って世間を驚かせたが、マグロを通じて深くつながっていたのが、釣り仲間で、すしチェーンの大手、「すしざんまい」を展開する喜代村(東京都中央区)の木村清社長だ。木村社長はしんみりと語る。

「デカいの釣れたって島からうれしそうに電話をくれてね。命がけで一本釣りした魚だし、何とかしたい、と思って、築地で184万8千円で落札したんです。“松方マグロ”は大人気で、各店で即完売でした」

 木村社長が松方さんと初めて会ったのは十数年前の新幹線の車内。席が近く、木村社長が荷物を置いたまま席を離れると、「お忘れですよ」と、松方さんがバッグを持って追いかけてきてくれたという。

「親しくなった後も、『差し上げます』と、重い電動リールを会社まで持ってきてくれてね。腰が低く、まめな方でした」

 最後に会ったのは約1年前のすしざんまい本店だった。その2カ月後の昨年3月、脳リンパ腫と公表し、長期療養に入った。脳腫瘍(しゅよう)の治療に詳しい虎の門病院間脳下垂体外科の山田正三医師によると、脳リンパ腫は原発性脳腫瘍の一つで、患者数は全体の約3%と比較的まれな病気だ。ただし高齢者に多いという。

 70歳を過ぎたとはいえ、入院前まで精力的に仕事をこなし、豪快なイメージがあっただけに、芸能界でも大きなショックが広がった。

「“お兄ちゃん”に訃報(ふほう)なんて似合わない」

 西郷輝彦さんは呆然とした表情で話す。

「気さくで酒飲みで、(撮影で)京都に行くときにばったり会ったら『(新幹線の)ビュッフェで飲んでいくか』なんて言われて。時代劇の醍醐(だいご)味を聞かせてくれてね。京都に着いたときには二人でスコッチのミニチュア瓶を30本も空けて、ビュッフェのマネジャーをあきれさせたものです」

 初共演は1978年の「柳生一族の陰謀」(深作欣二監督)。松方さんは徳川家光を、西郷さんは忠長を演じた。

「お兄ちゃんの家光は鬼気迫り、誰もそばへ寄りつけなかった。そのお兄ちゃんが酒を断ったという噂(うわさ)を耳にし、久しぶりに共演したのが2015年の『柳生十兵衛 世直し旅』。映画撮影で水を得た魚のように伸び伸び演じるお兄ちゃんの姿がまぶしかった。作品は後世に残る。せめてもの喜びです」

 松方さんのラストの時代劇で初共演した杉本彩さんも悲しみをかみしめる。

「間近でプロフェッショナルな姿を見せていただき、幸せでした。長回しの殺陣に加え、70歳でこの色気?と驚いたものです。おいしいお店の情報交換などもさせていただいて……。共演者やスタッフへの愛にあふれた大先輩でした」

 杉本さんは撮影後、思いがけない“贈り物”をもらった。

「私が動物の福祉団体(Eva)を始めたことをお知りになり、なんと多額の寄付をしてくださったんです」

 趣味を愛し、仕事を愛し、そして仲間も愛した松方さん。どうか、天国の大海で安らかに。

週刊朝日 2017年2月10日号


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