妻:別居したこともあるもんね。
夫:そうそう。アパートを借りて本格的に出ていった。1年ぐらいだったっけ。
妻:すぐ近所だったけどね。うちから椅子とか持ち出したでしょ。朝、起きてみたら椅子がないから「あらー?」(笑)。
夫:そうなんですよ。出ていったものの、飼い犬のことが気になっちゃって、ちょくちょく寄っては餌をやったり散歩させたりしてた。
妻:気が付いたら帰って来てたね。
夫:だって家のほうが居心地いいんだもの。
妻:もう離婚しようっていうのは、お互い何度もあったと思いますよ。結局、子供にも恵まれなかったし。でも、子供がいないから離婚、っていうのはおかしいでしょ!って思いなおして。
夫:創作活動を続けてるから、ここまでこられたと思いますね。芝居がなかったら、一緒に居なかったと思う。二人とも演劇が好きで、話が好きで、あれこれ語り合うのが本当に楽しい。
妻:私が彼の才能の芽を摘んでるって思う人がいるみたいで、心外なんですよ。力はあるんだから、どんなことにも挑戦して、どんどん活躍してほしい。それができる人なんだから!
夫:必死で芝居に取り組む、戦友ですね。今月は久しぶりに、一緒の舞台があって、楽しみです。
妻:この時代、いろんな価値観がめちゃくちゃじゃないですか。特に、福祉が行き渡ってない!って痛感するんです。だから今回の舞台は、日本で老いるとはどういうことか、友情とは何か、がテーマ。でも、ドタバタのコメディーなの。
夫:今回もえり子さんの家族がモデルになっていて、僕は彼女の弟の役どころ。
妻:いつだって自分の作る芝居だけは現実を追いたい、って思ってるんです。テレビや映画にも出ていて、なんで今さら小劇場なの?って言う人もいるけれど、自分たちにしかできない芝居がやりたい! そう思ったら、小劇場しかないんですよ。
夫:それが僕ら夫婦の絆でもありますしね。
※週刊朝日 2017年2月3日号より抜粋