夫:宮沢賢治の影響も強いしね。

妻:私の父は高村光太郎や宮沢賢治に心酔していました。5歳のとき、宮沢賢治の「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」を読んでくれたんです。最後が「クラレの花がプルプルとゆれました」で終わっていて、その続きはどうなるの?って聞いたら「誰にもわからないんだよ」って言う。作者が書き終えずに死んでしまったのだと。びっくりしました。

夫:そこから創作に目ざめた、と。

妻:それまでお話っていうのはすべて、民話みたいな言い伝えだと思い込んでたので、誰かが書いた物語もあるんだと初めて知った。それから、お話の続きを考えたり、台本を書いて弟と一緒にお芝居したり。家の中にセットまで組んで。そんなときが一番幸せだったんです。

※「『愛人じゃだめなの?』 渡辺えりの夫が結婚で親から言われた言葉」へつづく

週刊朝日 2017年2月3日号より抜粋