脳機能の低下がもたらす心の不調。不機嫌が続くと、幸福度まで下がってしまう (※写真はイメージ)
脳機能の低下がもたらす心の不調。不機嫌が続くと、幸福度まで下がってしまう (※写真はイメージ)

 最近、どうもイライラしたり、気力がなくなりがち……。中高年に多いこの悩み、実は加齢とともに、脳の機能が落ちているサイン。放っておくと、不機嫌化は進む一方だ。

「すぐにかっとなり、不機嫌でいることが増えた」「以前よりも我慢がきかなくなった」──。

 60歳を過ぎたころから、こうした悩みが増えたというA子さん(67・東京都在住)。長く連れ添う同い年の夫とは仲が良く、夫の定年後は趣味の旅行に2人で出掛けるのを楽しみにしていた。

 だが夫が定年を迎えると、次第に心の平穏が乱れるようになった。家にいる夫に対し、イライラ感が募るようになったのだ。

「夫がテレビを見ているだけで、『座ってばっかりいないでもっと動いてよ!』と不機嫌になったり、ちょっと意見が食い違うと憎らしい気持ちになったりしてしまうんです」

 気づけば夫に対してのみならず、スーパーでレジの対応が遅い時、混んだ電車に乗った時など、さまざまな場面で不機嫌になることが増えたという。

 こうした「不機嫌化」現象の裏には、実は脳の機能低下が潜んでいる。例えば、前頭葉は、考えや行動をコントロールする“脳の司令塔”としての役割を果たす部分。感情をコントロールしたり、計画を立てたり、状況を把握する機能を持つ大切なところだ。

 脳科学者の篠原菊紀さんは不機嫌化のメカニズムについて、次のように分析する。

「加齢とともに不機嫌になりやすい理由として考えられるのは、新しさを許容することにかかわる頭頂葉後部や、感情の抑制にかかわる前頭葉の機能が低下しやすいから。記憶をつくるのに関連する海馬も年1~2%萎縮するので、いやな記憶の書き換えもむずかしくなります」

 篠原さんによれば、認知症に先立つ状態としてみられる「軽度行動障害(MBI)」に、加齢による不機嫌化とリンクする点が多いという。

「MBIには、怒りっぽくなったり、理不尽に論争的になる、我慢がきかなくなるなどの症状が見られます。また、順番を待てない、やる気がうせて無気力になりがちといったことも当てはまる。これは加齢とともに前頭葉の前下方(下前頭回)が薄くなっていることが理由。つまり、考えや行動をつかさどる前頭葉の状態によって、人の機嫌は大きく左右されるのです」

 あなたも自分では気づかぬうちに「不機嫌脳」になっているかもしれない。下のチェックリストを試してみよう。

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