東京電力福島第一原発(今年3月撮影) (c)朝日新聞社
東京電力福島第一原発(今年3月撮影) (c)朝日新聞社

「消費者の皆様へ 原発の電気はこれまで“お安く”提供しすぎていました。本来の価格との差額を過去にさかのぼって計算し、今後40年かけて頂戴します」。こんな請求書を経済産業省が国民につきつけています。商道徳にもとる請求、その理由は東京電力と原発の延命です。

 経産省が9日示した試算は、東電の福島第一原発事故の被害が、いかに深刻かを示している。

 事故に関する費用の総額は、3年前の試算の11兆円から21.5兆円に膨らむ見通し。廃炉や汚染水対策は2兆が8兆円に、除染は2.5兆が4兆円に。「お豆腐屋さんじゃないんだから」との小池百合子・東京都知事の言葉は、東京五輪の費用だけでなく、原発事故の費用にもあてはまる。

 被災者への賠償費は約8兆円に膨らむ。増えた分を回収するため、経産省は新たな“理屈”を考え、電気料金に“カラクリ”をしかけようとしている。

 経産省が自ら旗を振る電力自由化が今後進むと、原発を持たない会社から電気を買う消費者が増え、料金も規制できなくなる。規制の残る送電網の使用料(託送料金)に上乗せし、全国の消費者から40年間集め続けるのが、新たなカラクリだ。一般家庭で、月約18円の負担増となる。

 そもそも、消費者は今でも賠償費を実質的に負担している。賠償費は本来、東電が負担すべきだが、東電のお金だけでは足りない。そこで、原発を持つ大手電力会社が助け合いのしくみをつくった。これが「一般負担金」だ。

 原発事故後の2011年度から、各社は自らの原発の設備の大きさに応じて負担している。関西電力や九州電力など、原発に頼る会社ほど負担額が大きい。電力会社は料金をはじく際の原価に含めることができ、実は消費者負担になる。

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