駆けつけ警護の任務を初めて与えられた陸上自衛隊派遣部隊の壮行会で訓示する稲田朋美防衛省(壇上)と隊員たち (c)朝日新聞社
駆けつけ警護の任務を初めて与えられた陸上自衛隊派遣部隊の壮行会で訓示する稲田朋美防衛省(壇上)と隊員たち (c)朝日新聞社

 日本ではあまり知られていないが、世界で今、起こっている戦争は、遠く離れた会議室のモニター上で行われているという。無人偵察機、無人爆撃機など「ドローン」が戦争の主役なのだ。一方、「駆けつけ警護」という新しい任務を付与された自衛隊は、ドローンも持たず、南スーダンへ出発した。自衛隊の問題点を軍事ジャーナリストの竹内修が明らかにする。

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 南スーダンでのPKO(国連平和維持活動)に派遣された陸上自衛隊部隊へ付与された新任務「駆けつけ警護」が12月12日から始まる。「駆けつけ警護」とは昨年9月、国会で成立した安全保障関連法に基づくもので、国連、NGO関係者などがゲリラなどに襲われたとき、自衛隊が武器を持って助けに行く、という任務だ。相手と銃撃戦になるリスクも生じる。

 しかし、この駆けつけ警護には“死角”があった。防衛省がまとめた「南スーダン国際平和協力業務実施計画」には、派遣部隊が持参する装備の種類と数が明記されているが、この文書の中では情報収集に使用するいわゆる「ドローン(無人航空機)」を持参するとは記されていない。

 筆者の知る限りにおいて装備の中にドローンは含まれていない。

 世界では近年、軍用ドローンの普及が急速に進んでいるというのに、わが国は一体、どうなっているのか?

 偵察用はもちろん、「テロとの戦い」では、アメリカ、イギリスなどがミサイルや精密誘導爆弾などを搭載したドローンを使用し、いまや戦闘の主役となっている。

 2009年にはパキスタン・タリバン運動の指導者であるバイトゥッラー・マフスードを殺害。11年のリビア内戦では逃走中のカダフィ大佐の乗る車両を攻撃して、逃走を阻止するといった成果を上げた。

 ドローンは大規模災害時の情報収集活動などでも活用されており、アメリカ空軍が運用する高高度を長時間飛行可能なドローン「グローバルホーク」は、11年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故で、超低空を飛行して事故現場を撮影し、画像が日本政府に提供された。

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