もし次期大統領が野党から誕生すれば、日本にとってはようやくこぎ着けた慰安婦合意などが白紙化される可能性もあり、さらなる一難という状況が待ち受けているかもしれない。

 一方、朴大統領退陣の方法、時期を巡り、韓国政局は大荒れになっている。

「任期短縮と話した談話は一見退陣するようなニュアンスですが、『進退』という言葉を使い退陣や下野ではないことを強調していて、国会に委ねるというのも、どうせ与野党では合意できないだろうという嘲笑が透けて見えます。案の定、野党と一緒に弾劾に向けて動いていた与党内の非朴系が動揺しました」(別の記者)

 野党は、弾劾決議に必要な国会議員の3分の2を満たす残りの議席を非朴系から確保したと豪語していた。が、議席確保が微妙になり、2日に予定していた弾劾決議も野党3党の足並みがそろわず結局、断念。すったもんだの揚げ句、3日に発議、9日採決で落ち着いた。

 談話に揺れた非朴系は、「7日までに大統領自ら4月退陣を表明してほしいという声明を出した。9日の採決で弾劾賛成に動くか注目されます」(同前)。

 野党はたとえ朴大統領が自ら退陣時期を公言しても弾劾決議の採決を行うとしており、「野党が弾劾にこだわるのは、次の大統領選挙に向けて国民に朴大統領を断罪したとアピールしたいため。また、2004年に弾劾訴追案が可決された故盧武鉉元大統領のリベンジの意味もある」(別の記者)。

 ソウル市内の60代のタクシー運転手は寂しそうにこう話した。

「3回目の談話では退陣する時期を潔く話してくれると思っていた。そう言ってくれれば、韓国国民は許してあげたと思う。残念だ」

 朴大統領退陣は佳境を迎えている。(ノンフィクションライター・菅野朋子)

週刊朝日 2016年12月16日号