天丼には、海老と鱚(きす)の天ぷら、紋甲イカのかき揚げ。揚げ油は、夏場と冬場でごま油の配合を変えて仕上がりを調整するこだわりぶり。蜆汁は40年来の名物メニュー。天丼(並)1500円、蜆汁700円(税別)天春 四谷店東京都新宿区四谷3―12 沢登ビル2F営業時間/11:30~14:30L.O.、17:00~20:30L.O.定休日 月曜(撮影/写真部・堀内慶太郎)
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天丼には、海老と鱚(きす)の天ぷら、紋甲イカのかき揚げ。揚げ油は、夏場と冬場でごま油の配合を変えて仕上がりを調整するこだわりぶり。蜆汁は40年来の名物メニュー。天丼(並)1500円、蜆汁700円(税別)
天春 四谷店
東京都新宿区四谷3―12 沢登ビル2F
営業時間/11:30~14:30L.O.、17:00~20:30L.O.
定休日 月曜
(撮影/写真部・堀内慶太郎)

 著名人がその人生において最も記憶に残る食を紹介する連載「人生の晩餐」。今回、俳優の白石加代子さんが選んだのは「天春 四谷店の天丼、蜆汁」だ。

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 このお店との付き合いはかれこれ20年以上。最初は妹たちが通っていたの。今も、家族でちょっと嬉しいことがあると「天春、行こうか?」って。そういうお店です。ご主人のお人柄が、お料理にもお店の雰囲気にもよく表れていてね。大げさなことは何もないけれど、居心地がいい。

 天ぷらは、特にかき揚げが絶品。分厚い紋甲イカだけを使ってあって、食感はサクサク。タレも甘すぎず、きりっとしているところも好みです。舞台公演中には、お弁当をお願いすることもあるんですが、力仕事の裏方さんたちにも大好評なんですよ。少しでもできたてを食べてほしいから、時間を見計らって主人に取りに行ってもらうんです。

 それにこの蜆(しじみ)汁、すごいでしょ? しゃかりきになって殻から身を出して、お汁と一緒にしゃしゃっと掻き込んで食べるんだけど、それが楽しくて。

 食事って、味の良さだけじゃなくて、心を尽くしてくださる、そのお気持ちの中でいただくのが最高に幸せだな、と。このお店に来るたび、思うんです。

週刊朝日  2016年9月9日号