電力購入を考える家庭はまず無料で会員登録し、募集があった際に申し込める方式。契約すると、応援したい発電所をホームページで選ぶ。スーパーの野菜売り場に生産者の名前や写真が表示されているように、発電所にどんな人が関わっているかを紹介し、親しみを感じてもらう試みだ。

 発電所は2020年までに2千カ所へ増やす構想。広報担当者は「自然エネを望む人の申し込みが多いと予想したが、想定より幅広い層の支持を得た」と話す。

 こうしたベンチャー企業から電気を買っても、大手電力会社の送電網を使うため、安定性は支障ないのが電力自由化のポイントだ。

 一方で、特徴や利点を十分にアピールできず、苦戦中とみられるのが携帯電話会社など通信系の新電力。切り替え時に必要な、電力の検針票を販売店に持参する人は想定ほど多くないようだ。販売関係者は「ショップの来店客はいったん自宅に帰って検針票を探し、再び手続きするのが手間なようです。使用量の少ないお客様はお得額が小さく、手間に合わないと感じるのかもしれません」と話す。

 4月以降、どのくらいの契約が変わったのか。

 自由化を進めるために国が設けた組織「電力広域的運営推進機関」によると、切り替えは7月末時点で全国148万件。過半数の87万件が東電エリアだ。震災後に2度値上げした、関西電力や北海道電力のエリアも多い。切り替えは、全国6250万件の家庭向け契約の2%ほどになる。

 この数字をどうとらえるか。みずほ総合研究所主席コンサルタントの宮澤元氏は「想定どおりのペース。大手も顧客を囲い込む対抗策をとるなか、十分大きな数字です。海外でも、ドイツやフランスなど穏やかなペースで契約先が変わった国もあります」と話す。

次のページ