顧客離れを防ぐため、大手もより魅力的な新メニューを出している。大手の動きに対し、電力比較サイト「エネチェンジ」の巻口守男副社長はこう指摘する。

「2%は、大手から新電力へ切り替えた数のみ。東電や関電などが自由化後に出した新料金プランへの切り替えは、入っていません。こうした変更も171万件あるため、自由化を機に何らかの切り替えをしたユーザーは、計300万件超で約5%。こちらの数字が、実態に近いのではないでしょうか」

 エネチェンジでの直近3カ月(5~7月)の切り替え先をみると、関電エリアの利用者の切り替え先は、1位ループ、2位東電、3位ミツウロコだった。

 電力自由化の今後について、巻口氏はこう続ける。「どのくらい電気代が安くなるかを、ユーザーもまだ実感できないのかもしれません。自由化のメリットを実感すれば、SNS等で情報発信し、口コミが広がって効いてくるでしょう」

 みずほ総研の宮澤氏は、新電力のなかでリーダー格になる会社が出てくるかどうかに注目している。

「どの産業もそうですが、市場が開放されたら、シェアを増やす競争のなかで、再編が進む。ただ、大手がすべて食ってしまうようになっては元も子もない」

 今はまだ群雄割拠の時代だが、特長のない会社はいずれ淘汰(とうた)される恐れがある。原子力発電所の再稼働が進んだり、今は安値の原油が高騰したりすれば、水力、火力、原子力など、さまざまな発電所を持つ大手の総合力の強みが増してくる。

週刊朝日 2016年9月9日号より抜粋