作家の室井佑月氏は、代表に立候補した蓮舫氏の会見内容に、疑問を呈する。

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 民進党ってどうなってるの? 岡田さんの次の代表になるため第2自民党のような連中が暗躍しているのは知っているけど、それ以外はどうするつもり?

 今の執行部の路線を引き継ぐといわれている蓮舫代表代行が本命視されている。けど、彼女の立候補会見を見たけど、どうしたいのかがさっぱりわからない。

 代表選をするのなら、共産党を含む野党共闘を争点にしなくては意味がない。

 連合の有力メンバー、原発推進の「電力総連」などとの付き合いだって、どうしていくのか知りたい。

 以下は蓮舫さんの会見の抜粋と、あたしの感想だ。

「民進党は何を行いたい政党なのか。民進党はどんな国を作る政党なのかを、しっかりと多くの皆様方に分かっていただける代表選にしていきたいと思っている」

 熱狂的な固定支持者がいる自民党と違い、ほとんどの有権者は民進党に、なんの思い入れもない。現状を苦々しく思っている国民の気持ちに、寄り添ってくれるかどうかが大事なのだ。

「政権が間違った方向とか、あるいは政権や与党が国民を幸せにしない政策とか、納得できない政治を作ったときに、それを牽制する役割はもちろんある。でも、私たちはさらにその一歩先に対案がある、提案がある、提言がある」

 きちんと牽制できてからだ、うちらが「その一歩先にある対案」というものを聞いてみたくなるのは。牽制に牽制をする議員が、民進党にいるのが不味(まず)い。

 
「まず『政策なくして路線なし』だ。(中略) 政権選択選挙において、綱領や政策が違うところと一緒に政権を目指すことはありえない。これは明言する。ただ、去年の夏から今年の夏にかけて、日本の政治の風景はずいぶん変わった。例えば子育ての問題とか、あるいは安全保障とか、総理の憲法の扱い方に対して実に多くの人たちが声をあげて動いてくださった。これは新しい景色だと思っている。この声に対して全ての野党が向き合い、呼応して代弁した。この新しい動きは、私は大切にしたいと思っている」

 だから、どっち? だいたい子育ての問題は、金の問題。税金を優遇されている大企業と戦う気があるのかが今、問われている。

 この後も記者に何度もこの問題を訊ねられ、

「綱領や政策が大きく違うところとは当然一緒に政権は目指すことができない。ただ、だからといって国民の皆様方の声に背を向けるのも、これも(できない)」

 と答えてる。

 どうするっていうねん。

「(安倍晋三政権との一番の違いは)いろいろ違うところしかないと思うが、女性が代表になるというところが一番違うのではないか」

 百合子の二番煎じを狙っているのか? 「富士山から飛び降りるくらいの覚悟だ」とキャッチーな言葉を出し、問題は先延ばし。

 ひょっとして、このまま中途半端な感じで消滅するのが美学だったり? それが民進党だったり?

週刊朝日  2016年8月26日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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