「安倍政権と宮内庁の調整はうまくいっておらず、安倍晋三首相との相性もよくないという見方もあります」(政治部記者)

 天皇陛下のお言葉は、もともとは12月の陛下のお誕生日会見で語られる予定だったが、陛下の意向で前倒しになったと言われている。「しびれを切らせた陛下が実力行使に踏み切った」(皇室ジャーナリスト)という。皇室制度改革に後ろ向きな政権への牽制(けんせい)だというのだ。

 天皇陛下の同級生で、元共同通信記者の橋本明氏は、陛下の意向が最優先であるとしながらも、こう話す。

「昨年も何度もお会いしましたが、私たちの年齢を考えれば、一番お元気です。ということは、憲法や平和主義を巡る安倍首相との『齟齬(そご)』に疲れて引退を唱えたのか、とも考えたくなる。本当にそうならば情けない、と友として言いたい」

 一方で、宮内庁幹部は、陛下の心情をこう慮(おもんぱか)る。

「違憲だと批判の声が上がるのはそうかもしれない。だが、陛下がメッセージを発しなければ、誰がお気持ちを語ることができるのか。ご本人以外にいない」

 陛下のお言葉からは、さまざまな懸念を読み取ることができる。陛下自らが引退のデッドラインを区切ったと思われる部分もある。

「冒頭、『2年後には、平成30年を迎えます』とおっしゃった。これは『平成30年までは、天皇を務める。それまでに政府は、退位への道筋をつけてください』と示唆なさったのでしょう」(元宮内庁関係者)

週刊朝日  2016年8月26日号より抜粋