ファンは見守るなか、キャッチボールをするヤクルトの由規 (c)朝日新聞社
ファンは見守るなか、キャッチボールをするヤクルトの由規 (c)朝日新聞社

「皆さんから『怪物だ』って言われましたよ。約5年やってないんだから、むしろ幽霊でしょ(笑)。ほとんど復帰できないと言われている肩の関節唇の故障を乗り越えたわけで、わが息子ながら、あの精神力はたいしたものです」

 7月9日の中日戦(神宮)で1771日ぶりに1軍マウンドに復帰したヤクルトの由規投手(26)の父、佐藤均さんはこう語った。由規といえば、今どき珍しいほど家族仲が良いことで有名だ。この日も父母と兄がそろって地元・仙台からやってきた。家族がスタンドで見守るなかでの復活劇となった。

 六回途中で走者を残して降板し、後を受けたリリーフ陣も打たれたため、被安打10で、6失点。チームを勝利に導くことはできなかった。だが、スタンドで観戦した均さんは、忘れられない場面があるという。

「六回の無死満塁のピンチ。2ボール2ストライクになったころから、『ヨシノリ~』という声援がすごくてねぇ……それも、戦っている相手の中日のファンまで一緒に『ヨシノリ~』って、声を張り上げてくれたんですよ。結果としては押し出し四球でしたが、よく頑張ってきたなと皆さんに評価していただいたように思えて……身震いするくらい嬉しかったですね。アイツの1771日は間違っていなかったんだ、と。

 顔を合わせるたびに『(由規は)どうなの?』と聞いてくる方もいて。ここまで、長かったです。少年野球の現場でも、子供に『ヨシノリって、誰?』と言われるようになって、寂しかったですからねぇ」

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