「田久保氏は、政治活動をしていると自ら認めているわけですよね。しかし、こんなに大きな政治運動をしているにもかかわらず、日本会議は単なる任意団体です。財務の公表はどうなっているんでしょう。政治活動するなら、政治資金収支報告書の提出義務がある政治団体として届け出るべきなのではないでしょうか」


 
 菅野氏が日本会議をテーマに選んで取材を始めた動機は何なのか。

「どう考えても安倍晋三首相に強い影響を与えている組織だからです。2015年2月に、自民党憲法改正推進本部の船田元本部長(当時)と安倍首相が話をして、憲法改正の発議は16年夏の参院選後と言い切った。その船田氏の発言を追っていくと、まずは緊急事態条項からという話をしていて、日本会議がそれ以前から主張していたことと一緒だった。ああ、ネタ元は日本会議だったんだと。それをきっかけに、本格的に日本会議の人脈を調べ始めたんです」
 
 意外だが、菅野氏は日本会議は「特定の綱領やドグマで結びついている集団ではない」と語る。では力の源泉は何なのか。

「日本会議の特徴は権利を主張する者、彼らから見た『サヨク』的な者をハラスメント的に敵視することです。これまでの活動を見ていくと、『男女共同参画事業反対』『夫婦別姓反対』『従軍慰安婦報道反対』『ジェンダーフリー反対』、そして、『外国人参政権反対』と、反対運動がほとんどです。こうした主張はつまり、『女、子ども、外国人は黙ってろ』ということを言っているに等しい。男優位の社会が当然と思っていて、女性や若者が権利を主張すると『黙ってろ』、外国人が権利を主張すると『よそ者は出ていけ』と言う。ですが、そういう主張をしているのは、日本会議だけじゃないですよね? 日本のオッサンって、皆そうじゃないですか。日本会議は、実は“日本のオッサン会議”なんですよ。そのオッサンたちの主張のおかしさを、メディアはずっと放置して取り上げてこなかった」
 
 00年代以降、魚住昭氏ら多くのジャーナリストなどが日本会議に関する論を出すようになったが、元祖は異なるという。

「1980年代からいち早く日本会議周辺の人々は危険だぞと警鐘を鳴らし続けてきたのはフェミニストたちでした。しかしメディアはその孤独な戦いを無視した。メディアもまた、世の中と同じで男優位だったからです。だから『日本会議とは何なのか?』と聞かれたら、『お前だよ』としか言いようがない。これは日本の縮図なんですよ。だから、日本会議って本当に良いネーミングだと思います。よくぞつけたなと」

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