国土交通省による三菱自動車本社への立ち入り検査 (c)朝日新聞社
国土交通省による三菱自動車本社への立ち入り検査 (c)朝日新聞社

 日産の子会社化によって救済された三菱自動車。一難去った印象が強いが、とばっちりを受けた国交省には苛立ちがあるという。ジャーナリストの山田厚史氏が取材した。

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 ゴーン社長の祝勝会みたいな共同会見の翌朝、浮かれ気分に水を浴びせるかのように国交省が動いた。

 東京都港区の三菱自本社に職員5人が検査に入った。2日前に提出された調査報告書から、燃費データ改竄に本社が関与したと読み取った。組織ぐるみの疑いは濃厚とみて、経営陣からも事情聴取するという。

 日産の資本参加で三菱自の危機は回避され、一件落着の空気が漂う。着手する検査が「宴会が終わった後のお掃除」と思われることに国交省は苛立つ。

 救済されても、三菱自の不正は消えない。立ち入り検査は、怒りの表明にも見える。

 怒らせた理由はいくつかある。信頼で成り立ってきた官民の検査体制が逆手に取られた。データの改竄を見抜けず型式指定を出した役所の面目はつぶれた。不正の解明と反省に全力を傾けていると思っていた経営陣は、日産との交渉に腐心。不正はゴーン社長が三菱自の経営権を安く手に入れる材料に使われた。

 日産のトップは昨年から三菱自の不正を知っていたと思われる。軽乗用車の共同開発で三菱自のデータがおかしい、と気付いたのは昨年11月。重要な経営情報としてトップに上がったはずだ。不正は4月20日に公表された。

「資本参加は以前から考えていたが、今回の件で時期が早まった」

 会見でゴーン社長は言った。日産はデータ改竄を暴き、世間を巻き込み、成果までも刈り取った。早く安く資本参加することに成功し、とばっちりを受けたのが国交省だ。

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