検査体制が根本から問われた。空気抵抗など基礎データの実測はメーカー任せで、提出された資料は疑わずに採用。その結果生まれたカタログ燃費と走行燃費のかい離。行政がなっていないと批判された。

「すべて役所でやるのは今の予算・人員では無理。性善説でメーカーに任せることで、検査体制が成り立ってきた」。実情を知る関係者は言うが、役所への風当たりはきつい。

 当面、国交省が取り組む課題は二つ。一つはデータ偽装の真相解明。組織ぐるみの不正は誰が指示したのか。もう一つは正しい燃費測定。三菱車を走らせて燃費を実測し、1リットルで何キロ走るか。水増し分を確定する必要がある。

 真相解明は三菱自の企業体質にメスを入れ、制裁を決める。燃費の実測は、ユーザーへの補償、エコカー減税の差額支払いなど経済負担を強いる。三菱自は10~15%水増しがあったというが、役所の検査でどんな数字が出るのか。日産が背負う買収コストに跳ね返る。

 官民の信頼関係は崩壊している。役所は手ぐすねをひいて検査に取り組むだろう。国交省はどこまで真相解明を進め、正確な燃費を明らかにできるか。本気とやる気が問われている。

週刊朝日  2016年5月27日号