「懐かしくて大好きな曲ばかりだけれど、不思議と自分がいただいた曲のような気持ちでレコーディングできました。オリジナルアルバムを作っている感覚に近かった。それは、ゴローさんのお陰だったと思います」

 原田さんの声は、歌っているときも話しているときも、とにかく耳に心地よい。アルバムを聴いていると、とびきりピュアで瑞々しい、まさに“若葉のころ”の世界に、トリップしたような気分になる。

「歌の仕事が面白くて不思議なのは、同じ歌を何度でも、いくつになっても歌えることですね。女優って、舞台はともかく映像の世界では、同じ役を何度も演じられないじゃないですか。でも、歌は、一曲と長く付き合っていけて、その年齢なりの歌い方ができるんです」

 少女のような柔らかいきらめきのなかに、大人らしい、キリリとした芯の強さが垣間見える。今も、大人の女性と少女の間を行き来しているような雰囲気が独特だ。

「大人になって良かったことはたくさんあります。人に優しくできるようになったり、人の痛みがわかるようになったり、物事を俯瞰で見られるようになったり。以前は、撮影に入る前やライブの前日は緊張して、『頭が真っ白で台詞が出てこない』とか『歌詞が全部飛んでしまった』みたいな夢をかならず見ていたんですけど、それも減ってきました。ようやく仕事に慣れてきたんでしょうね(笑)。歌だって、10年後は同じ歌を歌っても、違うことを感じるんだろうなって想像すると楽しいです」

週刊朝日  2016年5月20日号