――神輿に乗っかってるだけですか(笑)。
 プロはね、やれと言われたら、相当な理由がない限り断っちゃダメだと思うんですよ。言われた仕事とかね、行きたくないとかやりたくないとか言ったらプロじゃない。どんなことでも、それを楽しめなきゃ。

――結果的に音楽的な幅も広がる……な~んて知ったかぶりこいて(笑)。
 ハハハ。でも、実際そうですよ。

――意外なところでは、演歌の坂本冬美さんも。
 冬美ちゃんは「カバーズ」で……あ、「カバーズ」は自分からやりたいと言いました。レコード会社主導ではなくて(笑)。

――なにしろ、セルフカバーは先例がないですから、ネットでは「なぜ今、若造と組むのか」「こうでもしないと売れないと本人が思ってるんじゃないのか」なんて言われています。
 ああ、そうねえ。それは俺も聞きたいですね、レコード会社の人に(笑)。

――最近、自転車に乗ったり和服を着たり、音楽以外でも注目されてるから、ひょっとしたら若者の一部には忌野清志郎という存在が間違って伝わっているんじゃないかと……。
 ハハハハハ。それはありますねえ。どうしても人柄が、おもしろいおじさんみたいな感じが、出ちゃうんですねえ(笑)。もうインタビューとか出ない方がいいと思うんですけどねえ。「謎の人」みたいになっている方がレコードが売れるかもしれないよねえ、うん。だいたい音楽を言葉で説明するのって不可能じゃないですか。それをやらされちゃうわけよ。参ったなあ、これも人生かなあって(笑)。

――では、ここで3月に発売される新しいアルバム「GOD」について言葉で説明してもらいましょう。
 うーん、えーと、前作より音がいいですね。うん。音がいいっすよ(笑)。

――音を言葉で説明するのって難しいですよねえ(笑)。
 ははは。前作より太い音になっているんですよ。

――全編ロックンロール。ヒップホップじゃなくてこっちが本筋ですよね。
 うん、そう。

――3月5日が35周年。忙しくなりそうですね。
 いやあ、どうなんですかねえ。例年と同じ感じですよ。ただ、何にでも「35」がついてる。コンサートのタイトルも「ロマンスグレー35」。考えれば考えるほど分かんないですね、「35」って(笑)。全っ然半端だし。35年もやってんだって自慢してるみたいでいいかなあとも思いますけど。

――「40」でまたやることになりますよ。前作が「KING」で、今度は「GOD」。いよいよ次のタイトルがむつかしいですねえ。
 そうなんですよ。次が悩みの種で(笑)。

――今回の見出しは「忌野清志郎の釈明会見」にしようかと……。
 あはは。いいですよ、ぜんぜん。ははは。

* * *

「GOD」には、人気曲「JUMP」を収録。「ロックンロールに噓はない」と歌う「ROCK ME BABY」、ハイロウズの甲本ヒロトが参加した「REMEMBER YOU」など、ヒップホップにのれない世代のファンを充足させてくれる内容だ。

 清志郎さんは06年7月、喉頭がん治療のために休業宣言。その後、復活ライブを成功させたが、08年7月に左腸骨への転移が見つかり、翌年5月、58歳で亡くなった。(「AERA」2005年3月7日号の記事を加筆・再編集しました)