常に華やかな笑顔を絶やさず、声も大きく、滑舌もいい。いるだけでその場がパッと明るくなる存在感はさすがだが、人前で弱みを見せないようにする精神の強さは、宝塚のトップ時代に培われたものだとか。

「宝塚では誰もがトップの背中を見ているので、トップの人が落ち込んだり迷ったりしていると、その感情が周りに伝播してしまうんです。だから、私は稽古場では極力明るくいるよう努めていて、今はそれがすっかり普通になってしまいました(笑)。嫌なことがあっても、家に持ち帰って、家で片付ける。泣きたいときは、家で一人で泣く。でも、退団後は、それぞれに活躍されてきた先輩たちの背中を見ながらお芝居を学べているのがすごく新鮮です」

 初めての演出家。大半が初めての共演者。初めての劇場……。何もかも初めて尽くしだが、実は、マイクを使わない舞台も初めてだということに、稽古をしながら気付いた。

「声の大きさには自信がありますけど(笑)、お客様にしっかりお届けできるのか、ドキドキです。ただ今回、カレンの台詞に、『事実は両極端の中間のどこかに存在するのよ』っていうのがあって、それは芝居も同じなのかもしれない、と。役と私。どちらかに寄りすぎるわけでもなく、中間のいい位置で演じることができたら、楽しいんだろうなと思います」

週刊朝日 2016年4月29日号