来年の春、無事に大学に入学できたら、そのときも浪人のメリットを大いに享受することができます。現役で入ってきた奴らは、大学生になった解放感に何も考えずに身を任せるだけですが、浪人を経験したあなたはそうじゃありません。そんな様子を落ち着いた目で見ながら、彼らよりもさらに大きな解放感に包まれて、自分の意志を持ってはしゃぐことができます。当然、そのほうが嬉しさも楽しさもひとしおです。

 大学に行く意味や大学でやりたいことについても、浪人生活のあいだにさんざん考えるはず。実り多い学生生活を送るという意味では、現役生よりもはるかに有利なスタートを切ることができるでしょう。

 ただ、こうした「浪人ならではの宝物」を手にするためには、ふたつの条件があります。ひとつは、現役で合格した奴らに無用なコンプレックスを抱かないこと。強がりを承知で、「あいつら、浪人を経験できなくて気の毒になあ」と笑ってやればいいんです。胸を張って前を向きましょう。

 もうひとつは、この1年間は一生懸命、全力で勉強すること。ダラダラ過ごして不本意な結果に終わったら、その時は存分に挫折感を味わってください。全力を尽くしさえすれば、来年の春にどうなっていたとしても、けっして後悔する羽目にはなりません。
 みなさまのご健闘とご多幸をお祈り申し上げます。

石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
コラムニスト。1963年、三重県生まれ。主な著書に『大人力検定』『父親力検定』『日本人の人生相談』、共著に『会社図鑑!』『大学図鑑!』など。郷土の名物を応援する「伊勢うどん大使」を務める

週刊朝日  2016年4月22日号