「東京五輪では日本選手団のウェアなどの入札額が150億円にも跳ね上がった。ミズノにとっては、およそ3年分の収益をつぎ込む額となる。落札はとても無理ということになった」(同スポーツメーカー関係者)

 その結果、アシックスに軍配が上がったという。

 なぜ、このような展開になったのか?

 14年1月、「東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会」が発足。電通が専任代理店となり、マーケティングで収益を1500億円以上と設定した。

「実はロンドン五輪が終わってからの4年間も日本選手団のウェアのメインはミズノだったのですが、東京開催が決まって、白紙になったのです。そして公開入札的なプレゼンテーションによって東京五輪の契約を勝ち取ったところが、15年の4月6日から20年末日まで、JOCの公式ウェアのすべてをパッケージ担当する契約に変わったのです」(同)

 電通の発表によると、東京五輪は1業種1社でスポンサーを募った。このスポンサーは出資額によって3段階に分かれている。

 アシックスが結んだゴールドパートナー契約料はミニマムで150億円という。

 アシックスは、リオ五輪、18年の平昌冬季五輪と、東京五輪代表選手団のフルアイテムを担当する。東京五輪が決まった今、9アイテムを3社で分けるのではなく、1社が全てを用意するのだ。

「また、約8万人と言われるボランティアのウェアも提供する。額面150億円の金額に対して、こうした商品と、人的サービスを差し引いたものを現金で払うこととなっている」(スポーツメーカー関係者)

 アシックスの強さの秘訣はどこにあるのか。

 アシックスの売上高は00年度、1264億円だが、海外の売上比率は30%に過ぎなかった。ところが13年度の売り上げ3295億円に対し、海外売上比率は70%に上昇。海外での成功が、リオと東京の公式スポンサーの座を勝ち得るに至った。アシックスのOBが振り返る。

「アシックスは国内の売り上げが伸びず、海外に目を向けていった。幸い、少子化で日本のマーケットが小さくなったところに海外戦略が当たりましたね」

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