腰痛で欠場している石川遼。丸山茂樹氏は「とにかくいまは雌伏のとき」だとアドバイスを送る。

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 アメリカから帰国してすぐ、3月19日に兵庫県の福崎東洋ゴルフ倶楽部でイベントに参加してきました。

 姫路市を含む西播磨地域は、国産のアイアンクラブの製造発祥の地なんですよね。いわゆる「地クラブ」です。その西播磨を、ゴルフを通じて盛り上げていこうというイベントにお招きいただきまして、地クラブを使って、ニアピン対決をしました。

 105ヤードのニアピン対決では、まあプロが普通に打つと勝ってしまうので、最初の何球かはグリーンのギリギリを狙ったりしてました。でも「次は本気で狙ってみてください」と言われたから、バックスピンがかかってうまく入っちゃいました!

 まあー、盛り上がりましたね。しかも、そのときに対決した人が後半のラウンドでホールインワンしまして。面白いことがあるもんだと思いましたねえ。

 1990年代前半には、姫路のクラブを使ってる選手がいっぱいいました。僕も先輩からクラブをいただいたときに、「これは姫路で造っているクラブ」という話を伺って。すごくいいフィーリングだなという感覚があったんです。久しぶりに打ってみると、鉄のやわらかさなんかは姫路の地クラブ独特のもので、改めていいなと感じました。

 それでもいまは、外国のブランドに押されてるのが現状ですね。中国なんかで大量生産してますけど、その製造技術が向上してきた。コストパフォーマンスの問題が大きいですよね。

 でも、日本の「匠の技」のよさも捨てがたいですよ。もう一度、地クラブに光が当たればいいですよね。我々も少しでも力になれればいいと思います。まあプロゴルファーには契約というものがあるんで、全面的に協力するのは難しいところもありますが。

 話は変わりまして、去年から折に触れてアドバイスさせてもらってる渡邉彩香さん(22)が、Tポイントレディス(3月18~20日、鹿児島高牧CC)で2位に入りました。2週連続でトップと1打差だったんですけど、上々の滑り出しですよね。

 
 最終日はトップに6打差の12位から出て猛チャージ。最終の18番(パー4)だけがボギーだったんですね。セカンドでピンまで15メートルにしかつけなかったのが一番の原因でしょうね。僕は実際の映像では見てないんですけど、セカンドショットの打ち急ぎですよ。

 バックスイングがいつものポジションまで来てないのに、打ってしまう。プレッシャーがかかってくると、この現象が起こるんです。試合の直後に彼女と電話で話したときにそういう話をしたら、返事からして図星だったみたいです。

 だから、どんなときでもいつも通りやれるように練習しようという話をして。そんなに急にはよくならないから、1年間通じてどうだったかということで考えればいい。非常にいい滑り出しではあるんですから。

 石川遼(24)の腰は、椎間板(ついかんばん)ヘルニアの一歩手前だったそうですね。本人から連絡をもらいました。「具合がよくないので、練習ができるまで一歩ずつやっていきます」と。声が明るかったし、焦ってないんだなというのは伝わってきました。とにかくいまは雌伏のときです。

週刊朝日  2016年4月8日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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