池澤さんのように、60歳以降も同じ会社で働き続ける人は増えている。

 昨年10月、厚生労働省がまとめた「高年齢者の雇用状況」によると、過去1年間に60歳で定年を迎えた人の82.1%が継続雇用されたという。

 現役続行の人が増えたのは、2013年に施行された改正高年齢者雇用安定法がきっかけ。希望者に対して65歳までの雇用確保措置が企業に義務づけられた。同時に60歳代前半に支給されている特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられ、無収入の期間が生じてしまうことも原因だ。これらの制度ができたことで、「完全リタイアするのは65歳」という人が圧倒的に増えた。

 約30人いる池澤さんの同期のほとんども、雇用を継続して今も働き続けているという。

 働き続けるシニア社員が増えたとはいえ、池澤さんのように、職場の支え役として活躍する人はまだ少数。

「シニア社員の働く場を確立している企業はまだ少ない。シニアの実力を生かし切れていないのが現状」

 そう指摘するのは、キャリアコンサルタントの藤岡長道さん。

次のページ