注射の負担を減らせる?(※イメージ)
注射の負担を減らせる?(※イメージ)

 予備群を含め、患者は2千万人以上と推定される糖尿病。近年、「血糖値が高いときだけ下げる」「余分な糖分を尿とともに排出する」といった新型の経口薬が登場し、治療内容が劇的に変わってきている。

 膵臓で作られるインスリンの分泌や働きの低下で、血糖値が高くなってしまう糖尿病。2型糖尿病の経口薬(飲み薬)では長年、インスリンの分泌を促進させるSU薬(スルホニル尿素薬)と、インスリンの効きをよくするメトホルミン(ビグアナイド薬)が、治療薬の両輪だった。

 ただ、SU薬は血糖値を下げる力が強く、微妙なさじ加減が必要で、人によって低血糖を引き起こす危険性があった。この課題を改善したのが「DPP−4阻害薬」だ。DPP−4とは体内にある酵素の一種。日本では2009年12月に発売され、これまで「アログリプチン(商品名・ネシーナ)」など8種類が登場している。

 東京都の会社員、三浦太一さん(仮名・52歳)は、DPP−4阻害薬を使う患者の一人だ。身長170センチ体重80キロの肥満体形で、07年に2型糖尿病と診断された。6.2%未満が基準値とされるヘモグロビンA1cの値は10%を超え、SU薬と1日4回のインスリン注射で、なんとか6%台を維持していた。

 10年に通っていたクリニックから、順天堂大学順天堂医院へ。三浦さんが「仕事をしながら1日4回の注射はきつい。回数を減らしたい」と訴えたところ、担当の綿田裕孝医師は治療にDPP−4阻害薬を取り入れた。そしてインスリン注射の回数を徐々に減らしていった。

 この薬が効くメカニズムについて説明すると、まず食事をして血糖値が上がると、小腸からインクレチンというホルモンが出る。これは血液とともに膵臓まで行き、インスリンを分泌させ、血糖値を下げる働きがある。

 しかしインクレチンは、DPP−4によって分解されてしまう。DPP−4阻害薬はこの酵素の動きを弱め、インクレチンの作用を手助けするのだ。綿田医師が解説する。

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