池田氏「不在」の中、学会中枢に気になる動きがあった。昨年11月、06年から理事長を務めてきた正木正明氏が突如、退任し、後任に長谷川重夫副理事長が昇格したのである。

 正木氏から体調不良を理由に辞任の申し出があったというが、原田稔会長、谷川佳樹事務総長と3人で「集団指導体制」を敷いていたとみられるだけに、軽視できない動きだ。「創価学会で『クーデター』勃発」(「選択」1月号)との報道もあった。自民党との協力関係を見直すべきだと主張する正木氏と、谷川氏、原田氏との間に路線対立があったというのだ。学会の内部事情に詳しい元幹部がこう語る。

「昨年夏、安保法制に反対する創価大学の教授らが『有志の会』をつくったとき、執行部が激怒する中でも正木氏は教授らに同情的だったと聞いている。『正木降ろし』の動きは以前からあったが、こうしたことが引き金になったのでは。学会の活動が選挙ばかりになっている現状を問題視し、宗教活動に専念すべきだという意見も内部では増えており、政権と近い谷川氏や原田氏の『世俗派』的な考えと対立があるのです」

 宗教学者で、『創価学会』(新潮新書)の著書がある島田裕巳氏は、それでも、組織が割れるようなことはないと推測する。

「創価学会は池田名誉会長の下は横一線の組織。池田氏は『あなたたちが主役』と信者を持ち上げる一方、有力幹部を会員の目の前で叱責(しっせき)するなどして、権威を持たせなかった。だから、他の新宗教でよくある分裂も起きなかった。その池田氏が『不在』の中では、大きな路線変更を決断できるリーダーがいない。活動の中心だった団塊の世代が高齢化する中、徐々に国政への影響力が低下していくのは避けられないのでは」

 岐路に立つ創価学会がどんな道を選ぶかは、日本人全体の進路にも影響するのである。

週刊朝日 2016年2月19日号より抜粋

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