田原総一朗「『専守防衛』というフィクションに支えられた自衛隊は危うい」
連載「ギロン堂」
集団自衛権問題でよく耳にした「専守防衛」という言葉。政府は安全を謳うが、、それは曖昧で矛盾だらけだと、ジャーナリストの田原総一朗氏は警鐘を鳴らす。
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12月19日、私が司会を務める「激論!クロスファイア」(BS朝日)に古庄幸一(元海上幕僚長)、火箱芳文(元陸上幕僚長)、岩崎茂(元航空幕僚長)の3人に出席してもらい、日本の安保法制について問うた。
日本の安全保障を象徴する言葉が「専守防衛」だ。安倍首相は国会で繰り返し「集団的自衛権の行使は専守防衛の範囲内」だと強調した。一方、野党は「専守防衛の範囲外であり、憲法違反だ」と主張した。だが、実は「専守防衛」という言葉は、極めてフィクショナルな造語で、英語に翻訳できず、世界では通用しないというのである。
自衛隊は「専守防衛」であるため「武力行使」はできず、「武器使用」しか認められていないという。「武器使用」とは警察行動で、相手を殺してはいけない。相手を撃てるのは「正当防衛」と「緊急避難」の場合に限られている。「武力行使」は軍事行動なので、自衛隊には認められていない。なぜなら、自衛隊は警察の延長で、軍隊ではないからだというのである。自衛隊員は公務員であって、軍人ではない。
これが3人の説明であった。つまり、自衛隊は戦えないのだというのである。
今回の安保法制では、自衛隊は「現に戦闘が行われていない」場合には「後方支援」ができることになった。政府は「後方支援」だから危険性はあまりないと説明する。
だが、相手から見れば前方も後方も関係なく、攻撃しやすい部分を攻撃する。後方支援といえども、攻撃される危険性は大いにあるのだ。

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