「自衛官の募集業務が法定受託事務とされていること自体、懐疑的に受け止めざるを得ません。自衛隊に都合のいいように拡大解釈しています。自衛隊法や自衛隊法施行令の規定は、自治体側に提供の義務を法的に生じさせるものではないからです」

 自衛隊は「学校開拓」にも熱心だ。『経済的徴兵制』などの著書があるジャーナリストの布施祐仁氏が指摘する。

「07年から、募集の重点校を卒業した入隊5年以内の若い隊員をハイスクールリクルーターに指定し、母校で就職説明会を開いています。年の近い学校の先輩が体験談を語るのは、身近で効果てきめんのようです」

 また、小中学校の児童・生徒を自衛隊駐屯地に招いての職場体験学習が全国で行われている。滋賀県高島市の中学校では、とんでもない珍事件が起きている。トイレットペーパーを使用すると「自衛官等募集中」と印刷された文字が……。保護者から「不愉快だ」との批判を浴び、配布した滋賀地本が慌てて回収するという顛末があった。

 自衛隊のターゲットは学校だけにとどまらない。民間企業の新入社員を2年間自衛隊で研修させる「自衛隊インターンシップ・プログラム」なるものがある。

 13年に防衛省から経済同友会に提案したものだ。今年8月、参院安保法制特別委員会で追及した辰巳孝太郎議員が説明する。

「企業側のメリットは自衛隊でたたき込まれた命令に従順な社員づくりができる。一方、自衛隊側は厳しい募集環境の中で任期制隊員が一定数確保できることになります。新手の徴兵制というほかありません」

(本誌・亀井洋志)

週刊朝日 2015年12月11日号より抜粋