「17日の夕方だったと思いますが、波方容疑者が、生活保護を申請したいので書き込んでくださいと用紙を持ってきました。家賃が扶助されるそうで、家賃額と住所などを書いて判子を押しました」

 19日には、市役所の生活福祉課の男性職員2人が、一家を訪れた。男性職員(30代)はその様子をこう証言した。

「家は3部屋で真ん中の部屋で話をしました。こたつのテーブルがあって、生活保護の申請書類の補足をしました。テーブルの上にはお菓子の缶があり、母親はそれを触っていて、用紙を書くのに妨げになるからと、三女が寝かせてあげたりしていました。父親は病気で、歩いたり、ものをつかんだりするのが難しくなっており、三女は父親の介護もやっているようでした」

 このとき、藤田さんは「病気を治してまた働けるようになりたい」と話したという。三女も「働きたいが介護があるから今は難しい」と話したという。

 生活保護はその日、受理されていた。

 世帯全体に対する生活保護で、そのまま審査を通れば、月額20万円前後が支給されたようだが、その金額は三女らに知らされていなかったという。

「生活保護が適用されれば、藤田さんの病院費用も無料になります。申請をした矢先になぜ、三女が死を選ぼうとしたのか、驚きです」(生活福祉課職員)

 謎はまだある。藤田さんが新聞配達の仕事を辞めたのは事件10日前の11月12日。給料は月末締めなのだが、11月1日から12日までの給料を取りに来ないまま、死亡したという。

「妻の面倒は自分がみるという気持ちが強い人だったから、自分が動けなくなって、人に頼らなければ生きていけないようになるのがショックだったのではないかしらと思う」(藤田さんが勤めていた新聞専売所所長・坂井正美さん)

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