親族殺しの犯行動機として前科のない容疑者の多くは、「介護疲れ」「将来を悲観した」などを挙げるという。

「介護などで追い詰められ、うつ状態になり、被介護者を道連れに死ぬことが最もよい解決方法であると考え、事件を起こすケースが多い」(NPO関係者)

 事件について、元検事の徳永博久弁護士はこう見る。

「父親が本当に『死にたい』と言ったのか否かがポイントになる。母親に関しては、心中を図るほどのやむを得ない事情があったかどうかが重視されるでしょう。本件は殺人事件であっても執行猶予つきの温情判決が下される可能性もあります」

『下流老人』著者のNPO法人ほっとプラス代表理事の藤田孝典氏は、その心情をこう代弁する。

「生活保護を申請していたというが、申請を決意する感情は、そんなに生易しいものではない。自分が貧乏だということは、本音では恥ずかしくて語れない人がほとんど。実際に、生活保護を受けている世帯の自殺率は、受けていない世帯よりも2・2倍も高い。生活保護申請をした時点で、死(自殺)の可能性があるという認識を公的機関も持つべき」

 一家3人そろって年を越せるすべはなかったのか。

(本誌・上田耕司、松岡かすみ)

週刊朝日 2015年12月11日号より抜粋