「日本でやるなら、東京駅でしょう。2020年開催の東京五輪も狙われます」

 今回、パリでテロが起きたのもG20の前で、有志連合に打撃を与えることができたと分析され、テロはメッセージ性を持たせることが多いという。

「だが、警備が厳重になれば、やりやすいところに標的を変える可能性もある。テロは成功しないと意味がないので、目標を下げる可能性もある」(志方氏)

 来年には三重県の伊勢志摩でサミットがある。北海道の洞爺湖サミット同様、孤立した場所で開催するのは、厳重な警備態勢を敷くためだという。

 前出の大泉教授は、テロへの備えが脆弱なのは新幹線だと警告する。

「新幹線でガソリンをかぶって自殺した事件は、監視カメラの設置で一件落着のようになっています。しかし、これは犯人を捜すのには役立つでしょうが、テロ防止にはなりません。テロをする人は死を覚悟しているので、映像を撮られても構わないのです」

 テロの警備にあたる警察当局の問題も指摘する。

「例えば、ストーカーにつけられて警察に駆けこんでも、『何もやられていないなら、何もできない』というばかりで、事件が起きてから騒ぎだします。テロもこれと同じことでしょう」(大泉教授)

 テロへの警備強化はもちろんだが、一人ひとりがテロへの意識を変える必要もありそうだ。志方氏はこう忠告する。

「以前、渋谷でガス爆発があった時、逃げるのではなく、江戸の火事のように見に行ってしまう人が多かった。そんなことをしている場合ではありません。人々の意識を変えなければなりません。国や自治体が警備態勢を整えてもテロは完全に防ぐことはできないでしょう。市民レベルで、『何かおかしいぞ』と思う人などを見つけたら、その情報が集まるような仕組みも必要です」

週刊朝日 2015年11月27日号