昨年に続き今年もリーグ優勝したソフトバンク。パ・リーグとしては最も早い時期の優勝と、その強さはいうまでもないが、そこにつけいる隙があると東尾修元西武監督が指摘する。

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 ソフトバンクがパ・リーグを連覇してから10日が過ぎた。独走状態で優勝したチームの特権なのだが、残り試合をじっくり調整と体のメンテナンスに充てられるメリットは大きいよ。

 優勝後、工藤監督に電話で「おめでとう」と言って話をしたけど、すでにクライマックスシリーズ(CS)へ気持ちを切り替えている雰囲気を感じたな。

 とくに救援陣については、試合感覚を失わせない形でゆったりと使える。工藤監督は救援陣には「60試合登板」という制限を明確に設け、酷使を控えてきた。それでも、毎日準備を強いられる投手の負担は計り知れない。CSまでの間は、救援陣もローテーションを組んで登板させ、状態を整えることができる。その期間が約3週間あるのは大きい。

 デメリットもある。レギュラーシーズン最終戦は10月5日の楽天戦。CSファイナルステージ開幕の同14日まで1週間以上ある。紅白戦や、宮崎での秋季教育リーグ「フェニックス・リーグ」に出場したとしても、野手陣の「試合勘」には不安が残る。1勝のアドバンテージがあるとはいえ、1、2戦目で打線が沈黙すると、一気に形勢が不利になる可能性もある。

 それは他球団がつけいる隙でもある。ソフトバンクが圧倒的に優勢なのは間違いないし、まともにぶつかり合っても、4勝をもぎとるのは容易ではない。1、2戦目にいかにソフトバンク打線を封じるか。そこに活路を見いだすべきだ。

 
 私が対戦する投手であり、監督であるならば、狙うのは柳田と松田だ。4番の内川、5番の李はバットコントロールがうまく、技術力が高い。うまく内角を攻めたとしても、完全に沈黙させることは難しいだろう。

 柳田はどんな球でもフルスイングする打者。バットとボールの距離を作りにくい内角高めを徹底的に突く。速球だけではない。時にスライダーやカットボールを投げてもいい。松田の攻め方も同じ。内角をどれだけ突けるかだ。松田はバッターボックスで内角を空けて後ろに立ち、思い切り踏み込んでくる。空いている懐に投げ込むには技術力と度胸が必要だが、そこを突き切れれば、打者が勝手にリズムを崩してくれる可能性があると見ている。

 3番の柳田、6番の松田を抑えれば、得点力は半減する。エンジンのかかる前に封じられるかどうかだ。それができなければ一気に圧倒されてしまうだろう。短期決戦の勝負だが、2位、3位のチームにはファーストステージがある。エースや先発2番手を使い切れば、ファイナルステージのソフトバンク戦の序盤で投げられないという悩ましさもあるのだが。

 一方、混迷のセ・リーグでは、各球団のエース級が間隔を詰めて投げてもいる。優勝はともかく、最終順位の確定は、最終戦までもつれるかもしれない。救援陣の登板数は70試合を超えるから、当然、疲れが残る。日本シリーズに出てきたときには満身創痍といった状態かもしれない。

 現状ではソフトバンクの絶対的優位は動かない。CSでパの球団が、日本シリーズでセの勝者が、それぞれどんな形で王者に臨むのか。徹底的なマークを受けるソフトバンクがどう勝ち抜くのか。そんな視点で見ていきたい。

週刊朝日 2015年10月9日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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