「『ゾーンゲリヤン野田』と名乗り、多弁で明るい人。楽曲は母親の母語であるヘブライ語の歌詞で、『強いメッセージを込めた』と言っていた。(豪州の人気バンドの)AC/DCのようなスタイルで、演奏のレベルは普通。うちにはチケットを10枚ほどさばくノルマがあるが、友達が数人来ただけで届かず、自腹で負担していました」

 ネット上の画像投稿サイトには駅や路線図の写真を多数投稿し、鉄道への強い執着をうかがわせる。鉄道施設内に置いたペットボトルや燃料用アルコールを手にした自身の姿など、犯行を思わせる写真も投稿していた。

 そんな野田容疑者の父は、国の叙勲も受けた著名な版画家。作品には無垢な目をした幼少期の野田容疑者がたびたび描かれている。千葉県の実家周辺では知人らが驚いている。

「絵に描いたような素敵な家族で、伊佐也君も妹さんも両親に可愛がられていた。伊佐也君は空手を習っていて、学校でも目立つ存在だったと聞いています」(中学時代の同級生の母)

「ご両親は気さくな方。それが15日の朝、ものすごい形相で出かけていったので何かと思ったら、息子さんの報道が出たので驚きました」(近隣に住む女性)

 事件後、報道陣に囲まれて「ご迷惑をおかけしました」と繰り返していた父親は16日午後、改めて訪ねた本誌記者の取材に「話せることは何もない。もう勘弁してほしい」と疲れ果てた様子で語った。家族を悲しみに突き落としてまで、野田容疑者は何を表現したかったのだろうか。

週刊朝日  2015年10月2日号