角野:「トトロ」の次です。宮崎駿さん、ほんとに気さくな方で私の家にもいらしたことがあります。

林:『魔女の宅急便』がヒットしてからは、いろんな出版社が「うちで連載やってください」とか言ってきたでしょう。

角野:「作品を書いてください」はありましたけど、私は自分に自信がないというか、締め切りをつくりたくなくて、「できたらお持ちします」と言ってたんです。

林:まあ、いちばんぜいたくな書き方じゃないですか。今そんな書き方ができるのは、出せば売れるに決まってる3、4人の作家だけですよ。あれだけの大ベストセラーになって、生活も変わっちゃいました?

角野:自分一人で生きていけるという自信はできましたけれど、生活は変わらないですね。書くことが好きで、書いてると安心なんです。

林:外食も3千円以上は使わないそうですね。

角野:そう言っておくと相手も気がラクかなと思って。

林:ごちそうしてくださるときに、ですね。でもランチならともかく、いまどき3千円じゃそんなに……。

角野:ちょっと前です、それを言ったのは(笑)。そもそもあまり外食をしないんですよ。

週刊朝日 2015年9月4日号より抜粋