石原:いや、緊急事態だから、(法案成立まで)早いとこドンドンやれ。でも、亀ちゃんが改憲論者とわかってよかった。亀ちゃんと僕は大事な仕事も一緒にやってる。羽田空港の国際化ですよ。2000年、自民党政調会長だった亀ちゃんの部屋から2人で運輸省(現・国土交通省)に行って、次官を恐喝したんだ(笑)。ほとんど脅して、わずか15分の交渉で調査費をつけさせ、羽田空港D滑走路の着工につながった。

亀井:私は強権的な政治家じゃないんだけど、しょうがなしにね(笑)。こういう無茶な方が知事になったからできたんだ。

石原:横田基地でも闘ったよ。国民はほとんど知らないが、首都、東京の上空の制空権は今もほとんど米国が持っている。横田基地が所管する管制空域が「壁」になって、日本の飛行機は原則ここを自由に飛べない。日本の自立に関わる重大な問題なのに、東京都が黙っている必要はない。でも、外務省が腰抜けでどうしようもない。

亀井:慎太郎知事が闘って日米両政府は06年に横田基地の管制空域の一部(羽田空港の管制空域の西側に隣接する空域の約40%)を日本側に返還することで合意。米国から奪還した結果、羽田が国際化した。

石原:首相には横田基地の返還をナショナルイシューとして取り組んでもらいたい。僕はね、これまで国が滅びるのを2回見た。ひとつはベトナム。1966年末、クリスマス停戦を取材するために現地へ行き、サイゴンで何人かの知識人と会った。彼らは何ともシニックな姿勢で、亡国の瀬戸際にありながらただ傍観しているだけ。知識人の無力さに固唾をのむ思いがした。もうひとつは、中国に滅ぼされたチベット。多くの知識人がその存在を忘れかけている。悲しいことだが、日本の状況も似ている。亡国の本質とは、自らの属する国家の歴史へのノンシャランス(無関心)にある。歴史から日本の立ち位置を考え直す時が来ている。

(構成 本誌・古田真梨子、西岡千史)

週刊朝日 2015年7月24日号より抜粋