ソフトバンクの工藤公康監督は、開幕のロッテ戦で2回に無死一塁から捕手の鶴岡を打たせて遊ゴロ。2点を追う7回、8回はダブルプレーで好機をつぶした。少し天を仰ぐシーンもあったが、表情はほとんど崩れなかった。コーチ経験もなく、まず初勝利がほしい状況で、結果が出なくても、しっかりと我慢していた。

 表情だけではない。チームの色にいかに監督が合わせていくかも重要となる。例えば、ソフトバンクは主力のほとんどが昨年からいる。工藤監督は、自分の色を出すよりも、いかに選手を気持ち良くプレーさせるかに腐心する。「見守る」ということが大事な要素となる。コンディションを注視し、あとは適材適所に起用を進めていくことだけだ。

 逆に昨年最下位の楽天・大久保博元監督は違う。方針を明確に出して選手を引っ張っていく作業が必要になる。そのためには喜怒哀楽を出したっていい。監督自身が何を嫌い、何を好むのかを知らせることも大事だから。失うものはないから、自分の色を出しやすい状況にもある。

 私が西武監督に就任した95年、前年までチームはリーグ5連覇中だった。「見守る」作業が必要だった。開幕投手に立てたのは郭泰源。しかし、初回にいきなり7点を取られた。それでも8回2死まで投げさせたよ。はらわたが煮えくりかえるような思いだったが、1年間中心となって回ってほしい投手。実績十分の選手を早期降板させるわけにはいかなかった。一時は逆転しながら最後は10-11で敗れた試合後に、記者から続投理由を聞かれたけど「エースだから」とだけ話し、胸の内を明かさなかったことを思い出す。

 気になるのはオリックスだな。昨年、リーグ優勝まであと一歩まできた。ただ、オフにクリーンアップがガラリと変わる大型補強をした。加入した中島、ブランコ、小谷野は実績も十分だし、森脇浩司監督は基本的には「静」でいい。ただ、開幕のつまずきを取り戻すことに時間がかかった時はどうか。昨年との違いを受け止め、どう動くか。森脇監督の判断は難しい。

週刊朝日  2015年4月17日号