開幕戦で敗れ、選手に声をかけるソフトバンクの工藤監督(右端) (c)朝日新聞社 @@写禁
開幕戦で敗れ、選手に声をかけるソフトバンクの工藤監督(右端) (c)朝日新聞社 @@写禁

 待ちに待ったプロ野球が開幕した。今年も注目選手は多いが、東尾元監督が注視していたのは、監督の表情だ。

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 プロ野球が開幕して私が注目していたのは、監督のベンチでの立ち居振る舞い。特に新監督の表情を見たかった。作戦がはまった時もあれば、試合展開がうまく向かない時もある。その時にどんな表情やしぐさをするか。何よりベンチで選手が一番見ている部分だ。

 今の主流は、表情を一切変えない監督だ。一喜一憂はしない。最後のアウトを取るまで試合に集中する姿勢を見せる。試合展開の優劣で腹の内を表情に出したりはしない。かつて、巨人の長嶋茂雄監督が喜怒哀楽を表したり、中日時代の星野仙一監督がベンチを蹴り上げたりしたシーンはテレビ中継でおなじみだった。だが、今は監督の表情をテレビカメラがアップにしても、仏頂面が多い。

 でも、表情や立ち居振る舞いはとても大事なことだ。戦うのは相手とであって、自軍の監督の表情ではないが、選手は監督を見ている。ミスにいちいち怒りをあらわにしていては、選手の積極性にも影響する。大差をつけられて伏し目がちとなれば、選手はあきらめの意識にもなる。そんな試合では主力選手は休養でベンチへ下がることも多いが、代わって入った選手は戦っている。監督が集中力を切らしてはいけないのだ。

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