真木よう子主演ドラマはバッドエンドも“理想的な最終回”? 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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真木よう子主演ドラマはバッドエンドも“理想的な最終回”?

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週刊朝日#ドラマ

 その終わり方に賛否両論が多かった今季のドラマ。しかし、バッドエンドで終わりながらも理想的な終焉を迎えたドラマがあったと、ドラマ評論家の成馬零一氏は称賛する。

*  *  *
 ドラマの最終回は難しい。

 綺麗に終わりすぎると嘘くさくなり、あっさりと忘れ去られてしまう。かと言って奇をてらい無理やりバッドエンドにすれば「今まで見た時間を返せ!」と批判されることになる。

 そんな中で、坂元裕二が脚本を書いた『問題のあるレストラン』(フジテレビ系)は興味深い最終回だった。本誌3月13日号でも一度内容に触れたが、あえて再度、書きたい。

 本作はビルの屋上にあるレストラン「ビストロ フー」を舞台に、女性差別との闘いを描いた作品である。

 物語後半。セクシャルハラスメントが原因で会社を辞め、深い心の傷を負った親友のために、田中たま子(真木よう子)は訴訟を起こす。そして、社長の雨木(杉本哲太)から、ついに謝罪の言葉を勝ち取る。しかし、雨木社長は反省せず、それを知ったシェフの門司(東出昌大)は、雨木社長を殴ってしまう。一方、「ビストロ フー」には警察がやってくる。

 最終話。物語は前回から14日後から始まる。前回のことにまったく触れられないまま、主題歌を歌うきゃりーぱみゅぱみゅがゲスト出演し、楽しい場面が延々と続く。しかし、それがかえって、不穏なムードを醸し出している。やがて、雨木社長が経営するライバル店「シンフォニック表参道」は週刊誌にセクハラのことが書かれたことで、休業になったことがわかる。そして、「ビストロ フー」は、屋上からスプーンが落ちてきたことを理由にクレームを受けて、店を閉める。

 まるで、たま子たちの訴訟も、クレーマーの苦情も「同じ暴力でしかない」と言っているかのようだ。

 週刊誌を見ながら雨木社長は「やな世の中だ。汚い手を使ってパパを陥れたんだ」と息子の前でつぶやく。そして息子に「パパ可哀想だろう」「パパの敵をとってくれ」「こんな嫌な世の中に復讐してくれ」と言う。

 記事に書かれた「二代目社長の傲慢」という文字を見て「俺はオヤジに何もしてもらったことねぇよ」とつぶやく場面は、彼が父親に精神的な虐待を受けて育ったのではないかと、想像させる。

 一方、「ビストロ フー」解散の日を前に、たま子たちは終始楽しく盛り上がる。解散の打ち上げが終わり、みんなが寝静まる中、たま子は夢を見る。それは、「ビストロ フー」と「シンフォニック表参道」の男と女たちが仲良く同じお店で働く姿だった。そこには、最後まで和解できなかった雨木社長の姿もあった……。

 どうせドラマなんだから、問題を全部解決して、綺麗に終われよ。そう思う人も多いだろう。しかし、ドラマの中で綺麗に問題が解決しても、「現実」が変わるわけではない。

 夢の中でしか雨木社長との和解が描けなかったのは、それだけ、このドラマが描いてきた女性差別の根底にある男の側の問題が深刻だからだ。

 坂元裕二のドラマには「断絶の美学」が常に存在する。恋人とはいつも別れ、気持ちを理解したいと思った敵とは分かりあうことはできない。

 雨木社長との断絶を抱えながら、ひたすら楽しい時間を描いた本作の最終話は、明るい違和感の塊である。

 しかし違和感があるからこそ、何故うまくいかなかったのだろうか?という問いかけが心に残り続ける。

 不格好に見えるかもしれないが、現実とドラマに梯子をかける理想的な最終回だったと言えよう。

 というわけで、この「ドラマのトリセツ」も今回で最終回。また、どこかでお会いしましょう!

週刊朝日 2015年4月10日号


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