一文字一文字活字を拾い、版を組んで印刷する活版印刷。オフセット印刷の台頭により、昭和40年代を境に衰退してきたが、近年、若い世代を中心に再び脚光を浴びている。
東京・銀座にある中村活字は今年で創業105年。5代目の中村明久さん(65)によると、2007年頃から名刺の注文が増えたという。ここで名刺を注文しているデザイナーの村上幸枝さん(30代)は「職人技が感じられて風合いもいい」と話す。
東京・鵜の木に活版印刷工房オールライトプリンティングを構えるデザイナーの高田唯さん(34)は言う。「本来、活版印刷は凹みやムラが出ないようにするのが職人の腕の見せ所。でも奇麗な印刷が当たり前になった今、若い方たちは凹凸やかすれに新鮮味や温もりを感じるようです」。活版印刷の魅力は、中村さんも高田さんも「コミュニケーション」と口を揃えた。職人と客が何度も言葉を交わして完成する名刺は、どこかあたたかい。
※週刊朝日 2015年2月6日号