2014年11月に八丁原地熱発電所を視察した小泉元首相 (c)朝日新聞社 @@写禁
2014年11月に八丁原地熱発電所を視察した小泉元首相 (c)朝日新聞社 @@写禁

 原発回帰が進む日本。2014年9月、小泉純一郎元首相は地元・神奈川県横須賀市で小泉家の後援会約40人を集めた食事会に姿を見せた。現在は進次郎氏を支援する後援会幹部が、東日本大震災後「脱原発」を主張し、安倍自民の方針を批判する小泉氏の真意を知りたいと一席をもうけたのだ。そこで小泉氏は再生可能エネルギー(再エネ)への方向転換を訴えた。

 なし崩し的に進む再エネ抑制の流れを小泉氏はどういう思いで見ているか。

 小泉氏は細川護熙元首相と一緒に立ち上げた一般社団法人「自然エネルギー推進会議」に参加し、各地の再エネ施設を視察して回る姿が、たびたび報じられた。昨年9月には、就任あいさつに訪れた自民党の谷垣禎一幹事長に「原発を廃止するという選択は、いま、ありなんだけどな」とチクリ。脱原発発言を繰り返す一方、「選挙にはかかわらない」と語り、先の衆院選でも表舞台には出てこなかった。真意はどこにあるのか。小泉氏を知る関係者は「最近の動きは、息子の進次郎氏のためだ」と指摘する。

 進次郎氏はこれまでも原発政策について「本当にあの事故から学んでいるかと思うことがいっぱいある」と語るなど、たびたび安倍政権への批判とも取れる発言をしてきた。先の衆院解散に対しても「大義がない」と公言しているが、第3次安倍内閣では復興政務官に再任されている。

「復興政務官は地味なポストなのに難しい立場だ。安倍首相は進次郎人気を被災地の不満を抑えるのに利用する一方、復興が遅れれば、責任を進次郎氏に押しつけることもできる。安倍官邸の思惑を見抜いている小泉氏は息子が窮地に陥った時のため、再生エネを旗印に反安倍の勢力を結集できるよう運動をしているのではないか」(前出の小泉氏の関係者)

 そして一連の動きの裏には希代の勝負師である小泉氏流の“天下取り”構想があると指摘するのは、元経産官僚の古賀茂明氏だ。

「小泉氏は、5~10年後には日本は再エネを軸にした成長戦略に舵を切るべきだという世論のうねりが生まれると確信している。その時に進次郎氏が流れの中心に躍り出るために、自分の活動を通じて息子にも『脱原発』のイメージをつけようとしているのではないか。進次郎氏も時々、それらしい発言をしており、なかなか巧妙な戦略だと思います」

 日本の再エネ比率はわずか2.2%(大型水力を除く)と、欧米諸国に大きく立ち遅れてしまっている。

(桐島 瞬/本誌・小泉耕平、上田耕司)

週刊朝日 2015年1月16日号より抜粋